理由1 まっすぐに伸びた姿勢

背筋が伸び、耳から肩、膝、腰、くるぶしが一直線で結ばれた「見ていて気持ちのいい姿勢」はダンサーの美しさの源といえます。骨盤が前後傾して姿勢が悪くなるのは腹筋の弱さや、ハムストリングの硬さにも関係しています。通常、筋トレのようなエクササイズでは、それを改善するために体幹を鍛えたりするわけですが、ダンスの場合、まず最初に姿勢を意識することから始めます。姿勢を保ちながら動作を繰り返し行うことで、姿勢に関わる筋肉を変えていくアプローチなんです。例えば鏡を見て首の位置を確かめる機会は少ないと思うのですが、ダンスのレッスンでは、指導者も「首が前に出ている」「肩が内側に入っている」といったクセをつねに指摘します。身体を回転させるとき、上半身がブレないためには姿勢の安定が大切になります。ヒップホップでも、床で回転した後にピタッと静止してポーズをとったり、自分のカラダを自分で調節する動作が求められます。カラダを自分の意志でコントロールすることはダンスの大きな特徴です。

理由2 細く引き締まったカラダ

とくにバレエダンサーは体脂肪率が圧倒的に低く、身体が小さく華奢でも筋肉が発達しているのが特徴です。西洋に起源を持つダンスは足のステップ動作が中心で、つま先立ちをしたり片脚を上げてバランスをとったり、足を複雑に動かすことで大腿部やふくらはぎの筋肉が引き締まり、スラッとした脚になるということが言えるでしょう。以前、平均40歳の方々にバレエを3カ月間行ってもらい、その効果を測定したところ、ふくらはぎの筋肉が最初に発達することが分かりました。また、バランスの安定性には腹部や背部の筋肉が関わっています。プロのダンサーは姿勢が安定している人ほど体幹の筋肉が発達しており、脚を上げる動作では股関節周辺の大殿筋や内転筋群が強化されるため、ヒップの引き締めにも効果が期待できます。日常生活で疲れやすくなったりキレイな姿勢が保てないのは筋肉の衰えによるもの。ダンスは抗重量筋に作用する動作が多く、筋肉の割合が高まることで代謝が保てるというメリットもあるんです。

理由3 柔らかく、なめらかな動き

本来、関節はいろいろな方向に動かせるのですが、通勤とデスクワークばかりでは身体の前でしか四肢を動かさないため、その可動域がどんどん小さくなってしまいます。ダンスの動きは、例えばベリーダンスなら骨盤周りを、フラメンコなどは前傾しながら肩から上半身をひねったりすることが多いのが特徴です。ダンサーは、腕や脚、カラダを後方に反ったりひねったり、関節を日常動作よりも大きく多方向に動かすことで、可動域の大きいしなやかなカラダを保っています。カラダが柔らかければ、ふだん歩いたり物を取るような動作にも余裕ができ、若々しい印象につながります。実は柔軟性は、柔軟性に特化した動きをしないと向上しないという特徴があります。走力や瞬発力は筋肉量と相関関係があり、子どもは何かスポーツをすることでそれらが発達しますが、柔軟性は通常の運動の範囲ではほとんど変化しません。ダンスでは、つねに姿勢やバランスを保てるだけの柔軟性が求められます。レッスンでも入念なストレッチを行うため、カラダを柔らかくしたい人にもオススメです。

理由4 自分のカラダを見せる意識

ダンサーの中には50歳なのに20歳くらいに見えたり、サッとすばやい動作ができる人も多いです。それは長い練習の成果はもちろん、舞台で人にカラダを見せるという意識が高いのも大きいと思います。ダンサーが集合写真を撮ったりすると、皆さん何も言われなくても、カラダを斜めにしたり脚がキレイに見えるポーズをとるんです。それはレッスンで「この角度にするとキレイに表現できる」ということを教わり、見せる意識も研ぎすまされるということ。舞台に出るという最終目的があるからです。他のスポーツは、速さや高さ、打ったボールがどこに行くかというところに結果を求めますが、ダンスは結果が自分のカラダの中にある。その意味では自分のカラダに対する意識が高くなる運動です。最初のうちは意識に動作がついてこないという歯痒さもありますが、何かの動作が上手くいった瞬間から「踊っている感覚」が得られるんです。それがダンスの楽しいところでもありますね。


「舞台の稽古はハードな毎日が続くのはもちろん、同じ動きを繰り返すので、どうしてもカラダが偏ってしまうんです。そんな状態でヒールを履いて踊ったりするとカラダを痛めてしまいますし、自分のカラダをもっと研究して、使いやすくしたいと思っていたんです」ミュージカルダンサーの福田えりさんが通うのは、中垣葉子さんの運営するスタジオ、ラ・フォイーユ。ダンサーのコンディショニングにあたって、中垣さんはどんな点を重視し、指導しているのだろうか。「ダンサーにとって大切なのは、カラダがニュートラルなポジションになっているかどうか。振付けにもよるのですが、筋肉はよく使う箇所に付くため、動作のクセによって特定の箇所の筋肉が硬くなります。福田さんも当初、ももがすごく張っていて、上半身の緊張も起こしやすいカラダでした。骨盤の中に脚がきちんと入っていない状態で脚に頼った動きをしていたり、胸を張りすぎていて上半身が自由に使えずカラダに無理があったので、それを本来あるべき位置に戻して、しなやかなカラダをつくるプログラムを組んでいます」

そのメニューはスタイレックスを用いた美脚矯正と、ジャイロトニックによるエクササイズだ。スタイレックスは膝を固定した簡単なエクササイズにより脚の向きを正しくする矯正器機。中垣さん自身も、片膝が外を向くクセを矯正することで、片脚バランスのときもカラダが外へ流れなくなった。「O脚は骨が曲がっているわけではなく、筋肉によって脚の向きが変わってしまうことが多いのです。美脚をつくるポイントは脚よりも、むしろお腹を意識して骨盤を正しい位置にすること。バレエをやる方などはタックイン(お尻を縮め骨盤が後傾)した状態でムリにカラダを動かすことが多く、それが故障にもつながります。決して脚だけを一生懸命動かすのではなく、骨盤をニュートラルにして腸腰筋を上手く使えることが大切なんですね」

ジャイロトニックは、ジャイロ(円・螺旋)+トニック(整える)という言葉のとおり、深層部からカラダを伸ばしたりひねったり、全身運動によって骨盤や背骨・上半身をくまなく多方向に動かすのが特長。「ジャイロトニックを3カ月も行うと、筋肉のつき方が変わってきます。ダンサーさんはインナーをつけ、全身バネのように細く長い筋肉をつけて、よりカラダをしなやかにするのが目的。ダンスはひねる動きが多く、3Dで表現しますよね。ところが正面からはキレイに見えても、横から見ると平面的に見えてしまう人も多いんです。それはカラダの深いところから動かせていないため。その点でも、多方向にカラダを大きく動かせるジャイロはダンサーに合ったエクササイズ。静的なストレッチよりも動きながらの方が、柔軟な筋肉の質を保てるんです」

プログラムを実践する福田さんは「いつも沈んでいるカラダの重心が軽くなり、カラダが伸びた感覚になる」という。骨盤や背骨の正しいポジショニングを意識すると、四肢をしなやかに使うことができ、そのたたずまいも自然と美しくなってくるのだ。


「ストリートダンサーの方からは、よりキレのある動きをしたい、あるいはケガなく踊れるカラダをつくりたいといった要望が多いですね。基本として重要なのは、使えていない筋肉を使えるようにすること。腹筋が使えないと、それを背筋で補うようになって腰を痛めたり、カラダの動きも悪くなるわけです。それとプロのパフォーマーは、約3時間のライブで3000kcalものカロリーを消費します。彼らがステージで最高のパフォーマンスを維持するには、ファンクショナルとスタミナ向上の両面からのトレーニングが大切なんです」吉田輝幸さんは、EXILEをはじめとするLDH所属アーティストたちの専属トレーナー。一年中通してメンバーのフィジカル面をサポートし、ライブの二カ月前からはステージの特徴に合わせた緻密なトレーニングを実践する。「曲の構成を見ると、例えば『今回のライブは下半身に疲労が蓄積されやすい』とか『このダンスは一気に心拍数が上がりやすい』といった傾向があるので、下半身の筋持久力を高めたり、無酸素状態から心拍数を早く回復するためにAT値(無酸素性作業閾値)を上げたり、ESDといって自転車を全力で漕ぐようなトレーニングなど、それらをメンバーの皆さんと話し合いながら行います。ライブ時には、適切なタイミングでアミノ酸や糖質を補給できるよう、舞台袖にサプリメントも用意するんです」

ジャンプ動作の多いストリートダンスでは、バランスや柔軟性の向上のほか、伸張反射を促してカラダのキレを養うプライオメトリクス、敏捷性を高めて脚さばきをスムーズにするラダートレーニング、三次元の表現力を高めるためにケーブルやTRXを使ったトレーニングも重要視される。

今回はEXILEも実践する基本トレーニングから、股関節周りの柔軟性を高めるストレッチやコアを鍛えながら動きのキレを高めるプライオメトリクスをご紹介。これらは日常動作やダンス以外の運動時にも有効だ。運動前や毎日のエクササイズにぜひ取り入れてみよう。

Trend1 ダンスを習う「場」はボーダーレス化している

近年のフィットネスクラブでは、ユーザーがダンス関連のプログラムを求めてスタジオに集中する傾向にあり、それも2〜3年前まではエアロやステップ、ズンバといった燃焼系が盛んだったのが、より本格的なダンスへと移行する特徴が見られます。これは、学校教育でダンスが必修化された背景もあるでしょう。日本ばかりではなくアメリカやイギリスでも親子で楽しめるディスコが登場するなど、70〜80年代以来のダンスブームが全世代的に到来しています。とくに当時、ディスコに通っていた学生・OL世代はダンスへの抵抗がなく、その世代が現在、生涯スポーツとしてダンスを楽しむようになったこともダンス人口の増加に関係していると考えられます(左グラフ参照)。大人世代がダンスを習うにあたって重要なファクターは「目的」「ジャンル」「場」の3つ。「場」はフィットネスクラブ、スタジオ、公民館のダンス教室など「どこで習うか」の選択肢ですが、現在は、例えば東急スポーツさんが「THE★STAGE」を開設したり、逆にダンス専門のジールスタジオさんがフィットネス感覚のスタジオを新設するなど、レッスン内容や先生はほぼ変わらなくなっています。つまり、今の時、スタジオ選びは立地や環境、レッスン料や支払のシステムなどによるところが大きいのです。

Trend2 ダンス選びに役立つ3つのカテゴリとは?

一方、ジャンルや目的に関しては、最近の時流として、よりユーザーの趣味嗜好にあったクラス展開がなされており、それらは表のように「ダンスエクササイズ」「ダンスプログラム」「ダンスクラス」といった3つに分類できます。とくに「ダンスプログラム」は、好みの音楽から入れるため最も人気のあるカテゴリですね。 さらに、その中には必ず「入門クラス」があり、スクールによって呼称は異なるものの、人気の曲に合わせて振りを楽しむ「ファンダンス」やステージでの発表会をめざす「中上級クラス」があります。ただし、この区分けは、レベル別というより個々の目的に近いもので、例えばジャズを始めたいヒップホップ経験者がジャズ入門クラス入ってくることも。また、中上級クラスが90分のレッスン中、半分を基礎トレに充てるのに対し、ファンダンスでは同じ90分なら10分ドリンク休憩を挟んで前後40分とも振りをメインに行うため、先生が一流だからといって、スキルアップを図りたい中上級者がファンダンスを受けると物足りなく感じることもあり得ます。近年では各スタジオも、一般の方がスタイル別や年齢別などからダンスを検索できるよう工夫しています。

Trend3 ジャズヒップホップのクラスが急増中!

最後に、現在のトレンドとして特徴的なのは「ジャズヒップホップ」のクラスが増えていること。やはり自分のお気に入りの曲や、カッコいい曲で踊るとテンションも上がるわけですが、洋楽やJ-POPを踊る際、表現の基本はジャズなんですよね。ストリートダンスというとヒップホップがその代名詞のようになっていますが、アップ・ダウンの動作ではそうした楽曲が表現できない。そのため、もともとヒップホップ/R&Bのアーティストから、洋楽ポップス、J-POPまで、人気の楽曲で振付けをする「ジャズヒップホップ」が幅広い世代から人気を集めているんです。ジャズダンスという言葉の捉え方も、ショートヘアの女性がパンタロンやジャズシューズを履い踊るような昔のスタイルから全く変わってきました。とくにジャズヒップホップや、歌詞や曲調に合わせて情緒や心を表現する「リリカルジャズ」と呼ばれるカテゴリが、今のダンスシーンの主流になってきています